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新環境順応と高山病
3000m/10,000ft
を超す高山をトレッキングまたは登山するときに大切なのは、自分自身の高山高度への順応力を知っておくということです。高度が高くなればなるほど空気は薄くなり、それがあらゆる面で身体に影響を与え、最悪の場合には死に至ることもあります。
AMS -
急性高山病
一般的に高山病と呼ばれるこの症状は、通常2500m以上の高山地帯で発症しやすくなります。これに順応するためには数日間かけて空気の薄さに身体を慣れさせる必要があります。5500m/18,044ft
あたりの気圧は、海抜0m地点と比べて約半分になるといわれます。つまり、空気量も半分ということです。これがあてはまるのは、エヴェレスト地域ではKala Pattar頂上とAnnapurna地域のThorung La頂上です。
通常、3000m/10,000ft
以下の高度での登山およびトレッキングでは高山病の心配はないといわれています。AMSは急激に高度を上げすぎて、身体の変化に気づく前に高山病の症状が一気に悪化してしまった場合に発症します。この症状は、高度が高くなることではなく、急激に高度を上げてしまうことが問題なのです。
高山病は防ぐことができます。ゆっくりと高度を上げ、自分自身の身体が十分時間をかけて高度に順応していくようにすればいいのです。多くの登山家に有効な「安全基準」があるので紹介します:2000m/6562ft から3000m/10,000ftへ高度を上げるまでに2-3泊かけること。3000m以上では
300m/1000ft高度を上げるごとに休息をとり、900-1000m/3000ft 高度を上げるごとに1泊すること。でも、最終的には自分自身の身体の変化に自分自身が気をつけること。
高度変化に対する一般的な症状
3000m以上の高山地帯では、身体に深い症状が全くなく、完璧な状態を期待してはいけない。以下では高山地帯での高度変化による一般的な症状を紹介します。心配することはありません。全ての登山家が以下の症状の幾つか、または全てを体験することになるのだから。
不眠症状
十分寝てもまだ眠い(10時間以上の睡眠が必要)
しばしば食欲もなくなる
高度2500-3800mで白昼夢や幻想が見える
昼夜関係なく呼吸が一時的に困難になる
睡眠中に呼吸困難になって何度も目覚める- Diamox(高山病の薬)を飲むといい
高度4000m以上で登山中、頻繁に呼吸が困難になり休息が必要になる
鼻水が止まらない
頻尿症状
-
多くの登山家が夜中に何度もトイレに起きる
(身体が順応している良い兆候).
軽い症状
高山病にかかる前に以下のような兆候が見られる。
頭痛
-
登山家の中では一般的な症状。しばしば、夕方から痛くなり、だんだん酷くなって夜明けまで続く。枕を高くして頭と肩の位置を高くして眠ると症状が緩和されることもあるが、多くが痛み止めを飲む: aspirin (dispirin), paracetamol, Ibuprofen (Aduil)
または
acetamenophen (tylenol)が有名。睡眠薬は服用してはならない。Diamoxを服用するという手もある。頭痛は脱水症状などあらゆる原因によって起こるが、基本的には高度に身体が順応しようとしているために起こっている。
調子が悪い(気分が悪い) –
その後に頭痛が始まることがある。朝、調子が良い場合には1日休息をとって様子を見る。調子が戻らない場合には、低地へおりることも考慮する。
軽いめまい-
歩いている時にめまいがした時には、すぐに日陰で休息をとり、水分補給をする。近くのティーハウスで休息して様子を見る。
食欲不振または胃がむかつく-
急激に高度を上げすぎた場合によく出る症状。
喉の痛みを伴う咳または乾いた咳が出る。
つまり、下痢や喉の痛み以外の殆ど全ての症状が高山病の症状といえる。脱水症状からくる頭痛の場合には、高度を上げることは危険ではないが、AMSによる頭痛の場合には、最悪「死」という結果もありうる。ただし、症状が軽い状態で、頭痛の原因がどちらにあるのかは判断しがたいので、常に万全の対策をたてておくことが重要である。
決断は自分ひとりでは下さないこと。自分自身の身体が順応していくのに時間がかかることを認めること。
基本原則:
いくら症状が軽くても、今以上の高度へは進まないこと。
登山中にもし軽い症状が見られた場合、すぐに日陰で休息をとり、水分や果物などを補給すること。症状が変わらず続いている場合には、高度は上げずに同じ高度地帯にとどまること。症状が悪化し他場合には、高度を下げること。たった少し(100-300m/328-984ft)の下山だけで、随分と症状が改善することが多い。夜間に症状が悪化した場合には、急激に悪化した場合を除いて、朝まで様子をみること。朝食後に体調が戻っていたら、1日休息するか、軽いトレッキング(高度を上げない程度の)くらいにしておくこと。
登り続けることによって症状がよくなることはないので、調子が悪いと感じたら、身体が順応するまで同じ高度にとどまっておくことが一番の対処法である。
注意してほしいのは、その高度に達してから実際に高度の影響が身体症状として現れるまでに時間差があることである。実際、登山を始めて初日の夜には全く問題の無かった登山家が、2日目の夜になって急に調子が悪くなることがある。
酷い症状
止むことのない酷い頭痛
嘔吐が続く
運動失調(特に手足)
-
手足が思うように動かない。酔っ払ったような動きになる。
意識を失う
- 起きていられない、または物事をよく認識できない。
肺の中に液体があるような感じがする
咳が止まらない
呼吸が非常に困難
呼吸が速い、または休息していても呼吸が困難
咳で血やピンク色の物質、または透明な液体を吐く。
顔や唇が青くなる
心拍数が非常に高い- 120回/分以上
病的なだるさ、または眠さ
軽い症状だったのが急激に悪化
上記の中で特に、運動失調(特に手足)はとても判りやすく、重要な症状悪化のサインです。 まっすぐ歩けるかどうかのテストは簡単にできるので、症状のない人と並んでテストすれば判り易いでしょう。しかし、運動失調になってからすぐに下山しない限り、24時間後までに死に至る確率が高くなります。
基本原則:
酷い症状の場合には、ともかく迅速に下山すること
症状が酷くなった場合には、たとえそれが夜間であったとしても可能な限り低地へ下山すること。
(エヴェレスト地域: Phericheよりも高地に居た場合には、HRA
ポストまで、Thorung Phedi
周辺に居た場合には、Manang HRAポストまで下山すること)
患者は数人のサポートとともに下山するか、ポーターによって運んでもらうこと。-
患者の状態が良くなる前に、一旦悪くなることもある。下山後は休息をとり、医者に診てもらう。症状が酷い場合には水分も自分で補給できないことがある。それでも患者は「大丈夫、問題ない」というかもしれないが、それこそが意識がしっかりしていない証拠なので、特に気をつける。
医学的状況
High Altitude Cerebral Oedema (HACE) -
脳内に体液が入り込む症状で、軽い症状の上から4番目までと、酷い症状をあわせた状態。
High Altitude Pulmonary Oedema (HAPE) -
肺に体液が入り込む症状で、呼吸が困難になる。多くの上記症状が見られる。
断続的な呼吸-
高山地帯では呼吸システムに多く影響を与える。休息中や睡眠中に身体がだんだんと呼吸困難になり、一定の間隔で空気が足りなく感じるので大きく深呼吸しなければならなくなる。このサイクルが徐々に短くなり、呼吸全体が困難になる。この症状はNamche登山者に多く見られる。ただ、その多くが睡眠中にこの症状を経験するので気づかない場合が多い。高度5000m/16,404ftでは、ほとんどすべての登山家たちがこれら高山病の症状を経験する。但し、問題になるほどの症状がでるのはごく一部である。
手足、顔、または下半身全体のむくみ-
指輪を外す。HRAの研究では登山家のうち18%がなんらかのむくみ症状を訴えている。女性のほうが症状が出やすい。ほとんどが軽いむくみだが、酷い場合には下山も考慮すること。
高地免疫抑制
–高地ベースキャンプでは怪我やや感染症などが癒えるまでに時間がかかるので、大きな怪我などをした場合には、
Namcheあたりまで下山して傷や感染症が癒えるまで待機することを薦める。
高山病の薬
- Diamox (Acetazolamide)
これは尿の回数を増やすための薬で、血液を酸化させて呼吸を楽にさせる効果がある。以前は症状が実際に出るまでは服用しないほうがいいといわれたが、症状が出てすぐに下山ができない場合(ヘリで搬送される場合等)や、過去に過度の高山病を経験したことがある場合など、予防的に服用するといい。
しかしながら、最近の医学関係者は3500m以上の高山地帯への登山者は前もって予防的に上記の薬を服用しておくことを勧めている。それによってAMSの症状に至る者が減る可能性を期待している: tリスクを事前に多少軽減する効果があると見られている。しかしこれらの意見はまだ研究の余地がある。Diamoxはサルファ剤なので、これらに対してアレルギーのある人は服用を勧めない。肝臓に問題のある人も服用しないほうがいい。
(これを服用すると明らかにビールやソフトドリンクの味がわからなくなる)。この薬の副作用としては、利尿効果が大きいことと、唇や指先がひりひり痛むことがあるが、薬を避けるほどの症状ではない。
なので、軽い症状だが呼吸が苦しくなって夜中に何度も目覚めるような症状が出た場合などには効果的である。服用方法は12時間おきに125
から
250 mg (1錠の半分)を服用すること。
Diamox
の効果は症状を隠すものではなく、実際のところ問題の根本を解決してくれるので、症状がよくなれば下山の必要はない。しかし、だからといって、高度を急に上げてもいいことにはならない-
服用しても効果が出ずにAMSが悪化することもある。しかし、症状が出てから再び高度を上げる前に服用すると効果的であることは確かである。
医者のメモ
HACE –
早くて12時間以内、しかし通常は1-3日で発症する。最初の運動失調ですぐに下山すること。 もし悪化した場合には、6時間おきに4mg
のdexamethazone、12時間おきに250mgのDiamoxを服用、そして2-4l/分おきに酸素またはGamow bag (手に入るなら)を吸引する。
HAPE -
下山して12時間おきに250mgのDiamoxを服用、8時間おきに10mgのNifed
を服用、そして2-4l/分おきに酸素またはGamow bag (手に入るなら)を吸引する。
Oxygen -
サプリメントとしての酸素はすぐに身体的効果は現れないが、徐々に効果が出てくる。酸素吸入をしながらの下山が効果的。
Gamow bag/PAC bag/CERTEC bag -
最新の機材は酷いAMS症状に効果的。基本的には患者が中に入ることができるプラスチック製のチューブだが、下山しながらポンプで中の気圧を上げていくとより効果的である。
HAF –
高山の気圧によるオナラ症状
- HAFEの俗語
HAFE -高山の気圧によるオナラ症状-
出るに任せるにつきる!
実際的AMS
順応化の基準
個人差がかなり大きいが、そのまま症状を無視して高度を上げることで問題が解決することはない。Kathmanduに住むシェルパがKhumbuに行くことでたびたびAMSを発症している。研究結果としては1000-2000m/3281-6562ftに住む人はNamcheなど
3000m/9842ft以上の高山に行ってもAMSになりにくいといわれている。
しかしながら、高山に行ってしまえば他の人と同じ身体の順応作業が必要になることは確かである。1400m/4593ftの
Kathmandu
に1-2週間滞在していれば随分と順応化しているが、低地からKathmanduまで飛行機でやってきて、その後すぐにNamcheへ向かうような登山家は、高地への順応化がなされていないので、AMSを発症する可能性は高い。残念なことに、そのような人たちに限って急いで登りたがるのだ。団体の登山者のほうが、Jiriから歩いてKathmanduに入り、暫く滞在して準備期間を設けている個人登山者よりもAMS発症率が高いのもそのせいだろう。
新環境順応化プロセス
身体は数時間ですばやく空気の薄さに気づき、まず呼吸をもっと頻繁にすることで空気を取り入れようとする。- hyperventilate つまりより多くの酸素(O2)を取り込んで、より多くの二酸化炭素(CO2)を排出することによる衝撃で、血液のpH値が高くなる。
身体はpH値に応じてどの程度の呼吸をすればいいかを判断する(おもに血液中の二酸化炭素を溶解する) -
低地では筋肉運動が二酸化炭素を作るので、それを溶解するために酸素を多くとりこみ、二酸化炭素を排出する。休息中には筋肉運動量が非常に少ないので、血液中の二酸化炭素も少なく、すなわち呼吸がすこしでも十分に間に合う。
問題は、高山地帯ではこのバランスへの衝撃が大きいことによって身体はしばしば、必要以下の呼吸でも大丈夫と判断してしまうことである。数日かけて進退はこのバランスを整えるために、水分中の二酸化炭素(=尿)を放出することで補正しようとするので、水分を通常よりも多く補給することが必要なのである。Diamoxは肝臓に対して利尿作用を引き起こすので、これによって二酸化炭素が排出されて症状が緩和されるのである。また、その後1-2日の間で血液中にヘモグロビンを増加させ、4-5日後には通常よりも多くの血液が造られるようになる。
症状の個人差は、身体がいかに早くこの血液内のPhバランスを補正できるかによる。なので、そのペースが遅い人にはDiamoxの服用によって効果的に順応化できるのである。但し、既に補正機能が整っている人には効きにくいことがあるのだ。
高山地帯に数週間滞在する場合には、もっと多くの順応化が起こる。筋肉のミトコンドリアが複数化し、毛細血管も増加することによって、少しずつ順応化していく。
登山家の多くがべ-スキャンプで断続的な呼吸困難や、通常の体重を維持するのが困難になることを経験する。筋肉が鍛えられて強くなり、スタミナもつくが、筋肉そのものの大きさは大きくなるわけではないのだ。面白いことに、高山地帯に住むシェルパは断続的な呼吸困難を経験することは殆どなく、また実際的に十分な食事を摂ることによって体重を増加させることができるのだ。
順応化にどのくらい時間がかかる?
個人によって異なるが、高地に既に何ヶ月間も滞在しており、スタミナがついている場合には、数週間で順応化が可能である。つまり、高山に慣れているものでもそれなりに順応化まで時間がかかるのだ。だから、低地から数日で高山地帯に移動し、登山を楽しみたい者は、体調管理を怠らず、急がずゆっくりと登っていくことが肝心なのである。
もし一旦5000m/16,404ftまで登った後に3500m/11,483ftまで下山し、数日後に再び5000m/16,404ftまで登ることは問題ないだろう。例)Lobuche
と
Kala Pattarに登り、数日Namcheで数日休息した場合、Gokyo
へは問題なく登れるだろう。
高山地帯での睡眠
登山者が新しい環境で睡眠をとるのに苦労をする。特に毎日環境が変化する中では。3000mを超す高山地帯ではそれに追加して酸素濃度の低下による影響によって悪夢にうなされることもある。これに伴い、頭痛や鼻水、頻尿、いびき、呼吸困難や過呼吸などあらゆる高山特有の症状を持って眠るほかの登山者たちと同じ大きなドミトリーで眠れば、快眠ができることはないだろう。防音効果は全くないがテントや小さな部屋での睡眠のほうが断然快適な眠りを得られることでしょう。
食欲
人によっては食欲がなくなり、食べることが楽しくなくなることがある。同じように心配しないといけないのは、高山地帯においても通常以上に食欲が旺盛な人である。身体の疲れに応じて食欲が決まるので、休息していても身体は環境への順応に体力を消耗しているのだ。しかし、体内機能が正常に作動していないので、食べた分を消化できなくなってしまい、体調を崩すことが大いにあるのだ。
デイトリップなど...
日中に山を登り、夜間はゆっくり休むのが原則だが、とくに高山地帯ではこの休息が重要になる。AMS症状のないもの、または身体の順応化が済んでいるものにとっては、例えばDingboche
や
Phericheから
Chukhungへ向かったり、
NamcheからThameに向かうことは問題ないが、少しでも軽い高山病の症状が出ている場合には、そのようなムリはしないほうがいい。既に身体には限度がきているがために症状が出ているのだから、それ以上の(高度上昇による)ストレスを与える必要はない。代わりに、同じ程度の高度地帯へのデイトリップなどを薦める。また、軽い運動はかえって軽い高山病に対しては効果的ともいわれている。ベストとしてはきちんと休息をとることであるが。
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