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 タージガーデン

正門からタージマハルの足元へ向かって広がる緑のカーペットが敷き詰められたようなペルシャ風の庭園。インドにこのような形式の庭園を持ち込んだのは、草花や果物、鳥類や植物をはじめとして調和の美と優美さに心酔していた初代ムガル帝国皇帝のバブールでした。日本のように、自然を形式化するのではなく、「自然のままの美しさ」を強調することに長けている東洋風庭園とは異なり、ペルシア風庭園は「自然のまま」の状態に見えるようにではなく、幾何学的配置に基づいた、まさに「創造した自然」を愛でるように設計されています。

ペルシャ庭園でみられるように、タージマハルの庭園設計職人たちは、ある一定の形式に基づくことによって地上へ天国を映し出すことを試みました。イスラムで4という数字は全ての数字の中でもっとも聖なる数字なので、タージマハルの設計の殆どが、4または4の倍数で配置されおり、庭園は長方形に設計されています。また、噴水が点在し、杉並木(杉は死を象徴する)が並ぶ2本の白大理石で作られた水路は、ちょうど真ん中あたりで交わることにより、庭園を正確に4つの正方形に分割しています。

廟は他のムガル帝国時代の廟と同じく、中心軸を占める代わりに、北のはしの河の上に堂々と立っています。4つに分割された庭園は、盛り石で舗装された通路によってさらに16の花壇に分割されており、庭園の中心部、すなわち廟と正門との中間点にあたる部分に、尖頭のある大理石製の蓮型の水盤が立っています。この水盤の水面にはちょうどタージマハルが逆さまに美しく映るように設計されています。

庭園のどこからでも廟をはっきりと視界に捉えることができるよう設計されており、見る人の視線が自然に廟に向かうように、噴水や杉並木はまっすぐ廟へと向かって並んでいます。また、水を建築物全体の中に取り込んだ設計が、いかに繊細で精密に計算されたものであるかを見ることがでます。細く立ち上がるように並ぶ深緑色の杉並木は水路の水面に映し出され、白く輝く永久のタージマハルをいっそう引き立てる役目も果たしているのです。

タージマハルへの水の供給は精巧に設計された地下水道管によって行われています。水は河から牛を使ってバケツとロープを引き上げて長方形の貯水タンクへと引水されます。交差路以外の全ての配水設備は建設当時のまま残っています。頭上に伸びる無数のアーチで支えられた水道橋は、河から引き上げた水を大きな貯水タンクに運び込み、最終的には東壁にある貯水タンクへと繋がっています。水道管はその後地下を通り、タージマハルへと続いています。水道管のひとつは直接、モスクの大理石で装飾された赤砂岩でできた台座にある噴水の水を供給するためのタンクに続いています。また、北から南へと続く水路や蓮池、そしてその周辺にある小さな水路へは、それぞれ独立した銅製の水道管が使用されています。

配水にあたっては、噴水部分で出水圧力が衰えないようにしたり、貯水タンクからの距離によって流出水量が減退したりすることの無いように、厳密かつ精巧に設計されました。それぞれの噴水用の水道管の下には銅の瓶が設置され、この瓶を通じて給水される仕組みになっているので、水はまずこの瓶を満たし、次に噴水へと向かいます。すると、噴水はメインの水道管の圧力ではなく、瓶内の圧力によって管理されるので、全ての噴水は水量が等しくなり、またタンクからの距離などによって水圧が減退することもなく、常に同じ水圧でもって噴水を稼動させられるという訳です。

 水の主な供給にはしかしながら土管が使用されました。西側の水路にそのような水道管が用いられています。舗装された歩道の地下5フィートの位置に、直径9インチある土管が埋め込まれています。何世紀にも渡って故障することのない、水量と水圧の安定した水の供給を保証するという、まさにムガル帝国の高水準の職人技とも言えるこの土管―彼らは自分達の設計した配水設備が完璧であるがゆえに、補修工事などに対する準備を必要としなかったために、当時のものとしては異常な程地下深くにこの水道管は埋められたのです。